与那覇俊インタビュー(テキスト編)

与那覇俊インタビュー(テキスト編)

今回ArtPlaceでは、動画インタビューに掲載しきれなかった分をテキストにてご紹介します。

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与那覇 俊《有限内の無限 0=32023, 鳥の子紙, マーカー, カラーペン

自己紹介をお願いします。

僕の自己紹介はいくつかあります。1つ目は、「死後生涯」という言葉で、造語です。仏教徒でいう修行に似ていて、仏教で言えば、生きている間の「煩悩を諦める」。僕の場合は、飲み会とかカラオケ、ボーリングを、友達と遊ぶのをほぼ諦める。ここまで44年間365日、1日12時間ずっと頑張ってきました。釈迦で言う、涅槃の世界・死んだ後の世界をずっと創ってきたようなものです。

2つ目の自己紹介です。僕は1979年生まれで、小中高とサッカーと勉強に熱中しました。大学は、茨城の大学に進学してそこでフォルクローレというボリビア南米の音楽と出会って、それに熱中した後に、ボリビアに渡りました。その後ですね、日本に帰ってきて一年して精神を病んでしまいました。

1.絵を描き始めたきっかけ

昔は2001年、ちょうど病気になった頃から、「脳ノート」というのに自分の思い出とかアイデアとか、会社作りとか、宗教の施設づくりをしていたんですよ。2011年の12月に友達と別れてしまって、そこから2年空白が空いてしまって。2年空白があいた末に、他の知り合いの、キワエビトさんて方の絵を見て。「あぁ、ぼくもチャレンジしてみよう」と軽い気持ちで始めたんですよね。

はじめに、「心の芸術文化フェスティバル」で最優秀をとって。今思えばそれがなかったら、僕やめていますね。もう10年前に絵はやめていると思う。そもそも知識、絵に関しては本当にゼロだったんですけども自分の絵に関しては、もう専門家です。僕は、どんな説明もたぶんできると思います。

2.今回の作品のコンセプトを教えてください

タイトルは、《有限大の無限》といいます。
例えると、コンピュータっていうのは本当に小さなサイズですけど、世界の全体を描けているんですね。
僕の場合は、今回僕が依頼されたサイズは54cmと109cmなんですけどこれぐらいのサイズの中に、もう規模にしたら、相当大きな1キロメートルぐらいある世界を作った、と思っているんですね。

今回エレベータは2面、組み作品になっていて。描いているのは、世界情勢とか僕の人生とか、調布の百日紅(サルスベリ)、クスノキ、メジロを描いたんですけど。百日紅は猿がバナナで滑ってしまって、そのまま滑った勢いで一回転してしまって。重力で地球は月に落ちない、月も地球に落ちないですよね。それに似てて、物理的にはいっしょだと思いますけど、猿もバナナで滑ってしまって一回転している間に、無重力になって。猿が自分で、(相対性理論は、重力について説明した理論ですけども、)アインシュタインの相対性理論を解明したっていうのを作りました。

あとはですね。「正義の味方・調布マン」を描いていて、調布マンは、今回の作品のなかではひとつは、沖縄の琉球国祭り太鼓とか、エイサーを踊る調布マンと、もうひとつは皆さんにコーラとか飲み会をおごる調布マン、というのを描いて。調布マンの形は、調布の地図と同じですね。調布マンの中に、何故か僕が体内に入ってしまってそこで漫画描いたり、絵を描いたりしてるんです。

丸い部分は、世界情勢を表していますね。描いているのは、習近平と金正日と、バイデンとプーチン。あと、僕も一応出てるんですけど。僕が仲介して、戦争を止めたりとか。あと、バイデンと組んで、あの、バイデンというのは、僕の頭の中ではバイは「売る」という漢字で、デンは「電気」。電気をやりとり、買ったり売ったりして、バイデン(売電)と。で、世界の資源が今は、もう枯渇していて、それを改善するために、バイデンと僕が一緒に電気エネルギーを石油の代わりに使うとか、ですね。

僕の人生も描いていますね。僕の人生というか、僕の受賞歴ですね。受賞歴は、沖展入選とか、ですね。あとよく、ダリの《内乱の予感》という有名な絵もよく描いています。《内乱の予感》。世界は今、内乱の予感で、地球で、ほんとうにロシア中国、北朝鮮とか、アフリカとかも中東も、ちょっと変な感じになっているじゃないですか。それをどうにか、僕とバイデンとかで平和にする、トランプ大統領とかも一緒に。というのも描いていますね。

3.大きな壁面になる作品に拡大されることで意識したところはありますか?

今回、たづくり文化センターのエレベーターに自分自身でも乗ってみたいという気持ちで作りました。で、壁面2つあって、2つの作品がいっしょに組作品になっていて。僕も乗ってみるまではどういう風になっているかわからないから楽しみですね。

4.今回と普段の制作・作品に違いはありましたか?

普段はとっても自由に何も制約もないので描きたいように描いてやりたい放題なんですけど、僕はよく、一回の絵で、このサイズの絵で (50-60cmほどの四角い形を宙に描き)できるだけ挑戦して多くのことを描きたいと思うんですよね。多くのことを。僕よく思うのは、僕が40年経っておじいさんになったときに世界の中の0.01%しか描けてなかった、てのは本当に残念なんです。それでは、もう生まれてきた甲斐がないと思っているんですね。だから普段描いているのは、とても挑戦する用で、新しいどんどんいろんな世界を描いていこうと思っています。

今回はですね、調布の方からプロジェクトをもらってそれを参考に、いろいろ制約があるなかで描いてみたら、結構うまくいって新作が4作品できました。それはとても自分的には良かったと思っているんですね。

今後はもしまた依頼とかされたらどんな作品でもできるように事前に作りたいので色の種類とか、形とかをとってもたくさん使っておいてどんな依頼でも描けるように。という計画は一応ありますね。

5.与那覇さんにとって「描いているとき」とは?

基本、無意識で描いてて。もう無意識ていうか、ほぼ何もない気持ちで描いているので普段、死にながら描いているみたいなものですね。そういえば、過去の作品をみたら、自分で「あれ?こんなの描いたかな?」ていうのがたくさんあるんですよ。もう自分でも(覚えていない)。

人間の脳の記憶量って相当数あるんですけど僕の「これ描いた覚えがない」ていうのがたくさんあって。だから、絵自体は変わっていっていると思うんですね。

6. 早く描く特徴について

即興ですね。僕は考えないで描いているから多分早いんですけど。実はもっとゆっくり描くべきなんですよね。字が汚くなるとか、そういうのを克服してないですよね。絵がちょっと汚くなるとか。だから本当は速記即興でゆっくり描くべきなんですよね。まぁ矛盾しますよね。速記でゆっくりっていったら。でもできたら早く描きながらきれいに絵も描きたいと思っています。いつかはそれを体得したいですね。

 

7. 絵を描くこと以外で何か関心のあることは何ですか?

だいたい毎日の興味・関心は、いつも4:15から始まる地元のニュースがすごい楽しみで。QAB(琉球朝日放送)の『キャッチー』ていう番組ですけど。それが楽しみで、一周してるんですね。1日、毎日。他には自分の関心ごとや、頑張ってやっているのは、本を読むとか、外国語の勉強とか、よくしています。絵以外の関心ごと…僕の妹と義理の弟がインドネシアに行くので、今インドネシア語の勉強をしています。

たづくりで実際の完成作品を見る与那覇さん

8. 絵をとおして伝えたいことは?

伝えたいことはないですけど、皆さんに絵をまず見てもらいたいです。ひとつひとつ見て欲しいけど、全体と、ひとつひとつとか。小さな空間のなかに、たくさんいろいろ描いていると思うのでできたら持ち帰って欲しいですね。僕の見たアイデアとか、意味とか、世界情勢の会話とかを。持ち帰って、家で、自分のに変えてほしいです。解釈は自由に。伝えたいことはないけど解釈はいろいろ自由にしてほしいですね。

(写真提供:嘉納礼奈)

調布マンを指さす与那覇さん

9.今後はどのような活動やテーマに挑戦していきたいですか?

絵はここまで始めて10年で2つ代表作ができたと思っているんですね。3つ目は作らないといけないというのがあって。3つ目は模写漫画を作ろうと思ってて。僕は最近は、2ヶ月前から、漫画屋で漫画をたくさん買って自分なりに使えそうだなというのはチョイスして、絵を真似て描くというのをやっています。2ヶ月くらいで100枚くらい描けたんですけど9月くらいで1000枚になるのでそこで終わりたいですね。絵に関してはこんな感じですけど、目標は。

できたら昔、南米ボリビアで音楽をちょっと体験していたので、もう一回行って、やりなおしたいというのがありますね。

 撮影(沖縄):大湾朝太郎